CO2排出量の計算方法を解説。計算を効率化できるツール紹介も

カーボンニュートラルへの対応が企業に求められる中、事業活動に伴うCO2排出量を「正しく把握すること」は、すべての取り組みの出発点となります。

しかし、排出量の算定方法が分からない、算出作業に手間がかかるといった課題を抱える企業も少なくありません。

本記事では、企業がCO2排出量を算出する必要性を整理したうえで、基本的な計算方法やサプライチェーン排出量(Scope1〜3)の考え方をわかりやすく解説します。

あわせて、製造業が特に押さえておきたいポイントや、計算業務を効率化できるツールについても紹介します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。

CO2排出量 - CO2の削減・吸収量 = 0(実質ゼロ)

  • 温室効果ガスの「排出量」 を削減する取り組み
  • 排出量から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引く取り組み

これらを同時に進めて、排出量と吸収量の合計を実質的にゼロにするという考えです。

【関連記事】カーボンニュートラルとは?重要性や企業がすべきことをわかりやすく解説

この記事でわかること(3行サマリー)

  • CO2排出量の計算・把握は、温対法や省エネ法への対応、TCFDをはじめとする情報開示への備えとして、企業にとって不可欠である
  • CO2排出量は、排出活動ごとの活動量と排出係数を用いて算定し、Scope1・2・3を含めてサプライチェーン全体で管理する必要がある
  • カーボンニュートラルを意識した企業の事業活動は、企業価値向上や市場競争力の強化にもつながる
この記事の監修者
ビジネスソリューション事業部
第2営業部
中尾

業種や規模の異なる多様な製造現場で、課題のヒアリングから導入後のサポートまで一貫して携わり、多くのお客様から信頼をいただいてまいりました。
具体的な事例や成功体験について、ぜひお話しできればと思います。
お客様のビジネスをさらに成長させるお手伝いができるよう、全力で取り組みますので、ぜひお気軽にご相談ください。

目次

企業がCO2排出量を計算する3つの必要性とは

企業がCO2排出量を計算する必要性は、主に以下の3つです。

  • 法律による報告義務として
  • 気候変動に関する情報開示の推奨を受けて
  • 企業価値の向上や市場での競争力強化

地球温暖化による影響は、人々の生活にも影を落としています。このような状況を改善する手段として、カーボンニュートラルの推進が急務とされ、国内外や官民を問わず、さまざまな取り組みが行われています。

カーボンニュートラルの推進には、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を減らす取り組みが不可欠です。

事業活動を通じて直接的・間接的に温室効果ガスを排出している企業にとって、無関係ではありません。

まずは、なぜ企業がCO2排出量を算出する必要があるのか、その理由を詳しくみていきましょう。

(環境省「カーボンニュートラルとは」を加工して作成)

1|法律による報告義務として

日本では地球温暖化対策の推進を目的として、特定の事業者に対し、温室効果ガスの排出量や使用状況を報告することを法律で義務付けています。

報告義務のある企業(事業者)は、法律に則って排出量を計算し、報告することが求められます。

報告を義務付けている法律の概要を紹介します。

1-1【温対法】排出量報告

地球温暖化対策に取り組むための規定を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」では、2006年4月1日より、温室効果ガスを多量に排出する事業者を対象に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することを義務付けています。

国は報告された情報を集計し、公表しています。

対象となる事業者
  • エネルギー起源CO2について、すべての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者
  • エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスにおいて「温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000t以上」かつ「事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上」の事業者

なお、温対法は2023年9月1日に改正が公布され、2024年4月1日に施行されました。

この改正により、温室効果ガス算定排出量の算定方法が見直され、「温室効果ガス総排出量」において都市ガス及び熱の使用に伴う二酸化炭素排出量の算定に用いる係数などが変更されました。

温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、大気中に含まれるCO2やCH4(メタン)、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどの総称です。
温室効果ガスは大気中の熱(赤外線)を吸収する性質を持ちます。その結果、温室効果が強まり、地表付近の気温が上がり、地球温暖化につながります。

klとは

L(リットル)の1000倍。1kl=1,000L
※1,500kl=150万Lに相当

(e-Gov「地球温暖化対策の推進に関する法律」を加工して作成)

(環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」「「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について」 を加工して作成)

1-2【省エネ法】エネルギー使用状況報告

エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」では、一定規模以上の事業者(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用)に対し、エネルギーの使用状況などを定期的に報告することを定めています。

当初の省エネ法では、主に化石エネルギーの使用の合理化が求められていました。しかし、エネルギーを取り巻く状況の変化を踏まえ、2023年4月に法改正が行われています。
 
この改正により、化石エネルギーに限らず、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーの使用の合理化が求められるとともに、非化石エネルギーの利用促進や電気需要の最適化を図る法律へと見直されました。

エネルギー使用者へ直接規制する事業分野は、工場・事業場及び運輸分野とされています。

またエネルギー使用者への間接規制として、製造事業者などには、自動車や家電製品をはじめとする32品目のエネルギー消費効率の目標を設定し、達成することが求められます。

(経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法の概要」「2023年4月~ 省エネ法が変わります」を加工して使用)

2|気候変動に関する情報開示の推奨を受けて

G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、企業に対して、気候変動がもたらすリスクや機会の財務的影響を把握し、開示することを提言しています。

この提言は、気候変動が企業経営におけるリスク要因となり得ることや、金融に悪影響を及ぼすおそれがあることを踏まえて示されたものです。

TCFDに対し、世界全体では金融機関をはじめとする4,932の企業・機関が賛同を示し、日本では1,488の企業・機関が賛同しています(2023年11月24日現在)。

(経済産業省「日本のTCFD賛同企業・機関」を加工して作成)

3|企業価値の向上や市場での競争力強化

CO2排出量を計算・把握し、カーボンニュートラルを意識した企業の事業活動は、環境や世界情勢に配慮した経営姿勢を示すものであることから、企業価値の向上につながります。

このような動きは投資家の間にも広がりを見せており、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」に配慮した経営を行う企業に対して優先的に投資を行う「ESG投資」が注目を集めています。

ESG投資の対象となれば、さらに環境に配慮した経営を行うための投資が可能となります。市場での競争力強化も期待できるでしょう。

CO2排出量の計算方法~CO2換算による計算式~

ここからは、CO2排出量を実際に算出する方法として、CO2換算による排出量計算の方法を以下のステップでご紹介します。

  • Step1.排出活動の抽出を行う
  • Step2.活動ごとの排出量を算出する
  • Step3.排出量の合計値を算出する
  • Step4.排出量のCO2換算値を算出する

(以下、環境省「制度概要」を加工して作成)

Step1.排出活動の抽出を行う

温室効果ガスごとに定めた当該温室効果ガスを排出する活動のうち、事業者が行っている活動を抽出します。

活動の種類について

環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を確認しましょう。
以下の分類や業種別に分けた活動の種類が一覧表として載っています。

  • エネルギーの使用
  • 燃料の漏出
  • 工業プロセス
  • 農業
  • 廃棄物
  • フロン類等(HFCs、PFCs、SF6、NF3)

排出活動の抽出に当たっては、自ら行っているすべての活動が対象になります。

例えば自社が管理する設備を他社がメンテナンスする場合でも、管理の主体が自社であると判断し、活動の対象となります。

Step2.活動ごとの排出量を算出する

抽出した活動ごとに、基本的には以下の計算式で温室効果ガス排出量を算定します。

温室効果ガス排出量 = 活動量 × 排出係数

活動量とは

生産量・使用量・焼却量など、排出活動の規模を表す指標です。

排出係数とは

活動量当たりの排出量を指します。

活動ごとの算定式及び排出係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき、環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」で示されています。

Step3.排出量の合計値を算出する

温室効果ガスごとに、Step2で算定した活動ごとの排出量を合算します。

Step4.排出量のCO2換算値を算出する

最後に、温室効果ガスごとの排出量をCO2の単位に換算します。計算式は以下のとおりです。

温室効果ガス排出量(tCO2)= 温室効果ガス排出量(tガス) × 地球温暖化係数(GWP)

地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)は、温室効果ガスごとの地球温暖化をもたらす程度のCO2との比を表すもので、温室効果ガスごとに異なります。

例えば、令和7年度報告に用いられる地球温暖化係数は、CH4(メタン)は28、N2O(一酸化二窒素)は265といったように定められています。

CH4の28とは、「CH4を1t排出することは、CO2を28t排出することと同じ」という意味です。

地球温暖化係数は、過去にも法令改正等に伴って見直しが行われており、今後も変更される可能性があります。
環境省が公表する「制度概要資料」や「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」などで、最新の情報をご確認ください。

サプライチェーン全体でCO2の排出量を把握するには?

CO2の排出量については、自社での排出量算出のほかに、サプライチェーン排出量という考え方もあります。

「サプライチェーン排出量」は、製品に加えて組織のサプライチェーン上の活動に伴う排出量を算定対象とする考え方であり、資本財・出張・通勤など事業者の組織活動全体を対象とした温室効果ガス排出量を意味します。

サプライチェーンとは

商品や製品が消費者の手元に届くまでの調達・製造・在庫管理・配送・販売・消費といった、一連の流れ(ライフサイクル)のことです。

(環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」「サプライチェーン排出量算定の考え方」を加工して作成)

サプライチェーン排出量の構成

サプライチェーン排出量は、Scope1、Scope2、Scope3で構成されます。Scope3は、さらに15カテゴリに分類されます。

  • Scope1 : 自社による温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)※15カテゴリに分類される

こちらは、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量を、Scope1・Scope2・Scope3の区分ごとに示した図です。

サプライチェーンの流れとして、以下のように上流と下流に分けて考えます。

上流:原則として購入した製品やサービスに関する活動
下流:原則として販売した製品やサービスに関する活動

サプライチェーン排出量の計算方法

サプライチェーン排出量は、以下の計算式で算出できます。

サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量

Scope1とScope2の排出量は、活動量×排出係数で算出できます。

Scope3は、基本式「活動量×排出原単位」を15カテゴリごとに計算し合計して算定します。

排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量を指します。

例えば電気1kWh使用あたりのCO2排出量、貨物の輸送量1t-kmあたりのCO2排出量、廃棄物の焼却1tあたりのCO2排出量が該当します。

t-km(トンキロ)とは

貨物の輸送量を表す単位
t-km=貨物の重量(t)×貨物の輸送距離(km)
※1t-km=1tの貨物を1km運んだ場合の輸送量

CO2排出量の計算サイト~ツールにエクセルを使用~

経済産業省では、エネルギー利用環境負荷低減事業適応関連事業として、事業適応計画サイトにてエクセルによる「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」を提供しています。

利用マニュアルも公開されています。
計算ツールのひとつとして活用してみるとよいでしょう。

【製造業注目】温室効果ガス排出量の計算・把握が企業成長のカギ

製造業において、温室効果ガス排出量の計算・把握は企業成長のカギとなり得ます。

CO2をはじめとする温室効果ガス排出量の計算・把握は、持続的な企業経営を行ううえで不可欠です。すべての業種に求められる取り組みではありますが、中でも製造業が取り組む意義は大きいと考えられています

ここでは、その理由について解説します。

なぜ製造業が注目?

温室効果ガス排出量において製造業が注目されている理由として、温室効果ガスの排出が多い業種であることが挙げられます。

日本における2023年度のCO2排出量は、9億8,900万トンでした。部門別の排出量の内訳では、製造業を含む産業部門が34.3%と最も多くなっています。

国として、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言している中、製造業界全体で温室効果ガスの排出削減に取り組むべき意義は大きいといえます。

(参考:環境省 脱炭素社会移行推進室、国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス「2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)」)

なぜ排出量を把握する必要がある?

温室効果ガス排出量を計算・把握し、その結果を調達活動の見直しや他社との連携、CSR情報の開示などの事業活動に反映させることは、企業価値向上や市場における競争力強化につながります。

また、サプライチェーン排出量を算出することで、サプライチェーン上で優先的に削減すべき排出源を特定できます。

排出割合の高い項目から削減対策を講じれば、コスト削減や生産性アップにもつながります。

温室効果ガスの製品別排出量が比較可能!生産管理システム「ProAxis」

温室効果ガス排出量は、活動量や排出係数、地球温暖化係数が細かく定められているため、簡単に計算できるわけではありません。そこで、排出量の計算にあたっては、生産管理システムなどのツール活用がおすすめです。

ここでは、温室効果ガスの製品別排出量が比較できる生産管理システム「ProAxis」をご紹介します。

キッセイコムテックのオリジナル製品「ProAxis」は、現場ニーズを重視し、「適応性」「操作性」「柔軟性」を兼ね備えた生産管理システムです。

「ProAxis」は、カーボンニュートラルへの取り組みをサポートする機能も搭載しています。

製品の原材料や配送ルートから、生産設備内で排出した温室効果ガス、製品の使用や廃棄にかかる温室効果ガスを、Scopeごとにデータベース化。
排出量を登録・集計することで、製品に関わる温室効果ガスの種類とその排出量を求められます。

CO2をはじめとする温室効果ガスの製品別排出量比較が可能となるため、カーボンニュートラルに向けた取り組みを数値で評価できます。

「ProAxis」の導入にあたっては、「安心のOne Stop Service」体制を整えており、万全なサポート体制でお客様をバックアップいたします。

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CO2排出量を計算し、カーボンニュートラル実現へ。できることから始めよう

持続可能な社会へ向け、カーボンニュートラル実現への動きは世界共通の重要案件です。

温対法や省エネ法では一定規模以上の事業者に対して排出量やエネルギー使用状況の報告が義務付けられており、TCFDをはじめとする気候関連情報開示の流れも強まっています。

今こそそれぞれの企業で、自分たちができることを最大限に進めていく必要があります。
そのひとつの方法として、CO2排出量を計算し把握することは大事な取り組みといえるでしょう。

排出量を把握し、活用することは、企業価値の向上や市場競争力の強化にもつながるため、企業にとってもメリットがあります。この機会に、CO2排出量の算出・活用について考えてみませんか。

CO2排出量の計算には、温室効果ガスの製品別排出量が比較できる生産管理システム「ProAxis」をぜひご活用ください。

\ 生産管理システム「ProAxis」に関するご相談・ご質問はこちら /

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