グリーン調達とは。製造業で必要な理由や手順、環境省ガイドラインなどを紹介

原材料や部品、資材、サービスを調達する際に、環境負荷の小さいものを優先的に選定する取り組みが「グリーン調達」です。
地球温暖化や資源枯渇といった環境問題の多くは、企業の事業活動と密接に関係しており、製造業においても環境に配慮した調達・経営が強く求められています。
本記事では、グリーン調達の基本的な考え方から、製造業で必要とされる理由、実施する際の具体的な手順までをわかりやすく解説します。あわせて、グリーン調達の推進に役立つシステムも紹介しますので、環境担当者や購買担当者の方はぜひ参考にしてください。
この記事でわかること(3行サマリー)
- グリーン調達とは、原材料や部品、サービスを調達する際に環境負荷の小さいものを優先的に選ぶ取り組みである
- 化学物質規制などの法令対応や、取引先の環境配慮方針への対応を通じて、リスク低減と信頼構築につながる
- 自社に合った基準を策定し、共有・運用を行うことで、グリーン調達を継続的かつ効率的に推進できる
グリーン調達とは何か
グリーン調達とは、環境に配慮された原材料などを調達する取り組みです。
たとえば、以下のような例がグリーン調達に該当します。
- 環境負荷の少ない原材料や部品の調達
- 環境配慮型の製造プロセスを採用した取引先からの調達
- 環境負荷の少ない梱包資材や輸送サービスの利用
環境省は「グリーン調達推進ガイドライン」において、次のようにグリーン調達を定義しています。
グリーン調達は、納入先企業が、サプライヤーから環境負荷の少ない製商品・サービスや環境配慮等に積極的に取り組んでいる企業から優先的に調達するものです。このグリーン調達は、納入先企業の環境配慮の取組方針や事業戦略に沿って実施されます。
(出典:環境省『グリーン調達推進ガイドライン(暫定版)』)
地球環境の持続可能性や深刻化する気候変動への対応として、現在120以上の国・地域が、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を目標に掲げ、取り組みを強化しています。
グリーン調達は、企業がカーボンニュートラルに取り組む有効な手段の一つです。
カーボンニュートラルについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、あわせてご確認ください。

「グリーン購入」や「CSR調達」などとの関係
グリーン調達に関連する言葉として、「グリーン購入」や「CSR調達」があります。
ここでは、それぞれの意味と、グリーン調達との違いについて見ていきましょう。
グリーン購入
グリーン購入とは、購入の必要性や価格・品質だけでなく環境への影響も考慮し、環境負荷の少ない製品・サービスを選んで購入することです。
「グリーン調達」と「グリーン購入」は、取り組みの主体や法律の有無などが異なります。
| グリーン調達 | グリーン購入 | |
|---|---|---|
| 取り組みの主体 | 民間企業 | 消費者 (国や公的機関、地方自治体、企業、個人) |
| 概要 | ・生産者・販売者の企業戦略としての取り組み ・サプライヤーが、納入先企業の環境配慮への取組方針や事業戦略に沿って実施する | ・環境に優しいものを選ぶ消費行動 ・文具類、オフィス機器、照明など、製造と直接関係のない物品やサービスも対象となる |
| 関連法規 | ・法律はない ・企業が独自に「グリーン調達ガイドライン」を策定して、サプライヤーに対応を求めることがある | ・判断基準や対象となる品目は「グリーン購入法」によって決められている ・企業には一般的な推進が求められる |
企業によっては、事務用品のように製品の原材料や部品に用いない物品・サービスを「グリーン購入」、製造に直結するものを「グリーン調達」として、両者を区別していることもあります。
「グリーン購入法」について
グリーン購入には「グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)」という法律があります。
一方、グリーン調達を規定した法律はありません。
グリーン購入法は、重点的に調達を推進すべき環境物品等の分野・品目(特定調達品目)と、その「判断の基準」を基本方針として定め、企業に対しては環境配慮型製品の選択を進める「グリーン購入の一般的な推進」を求めています。
特定調達品目とその判断基準は、開発・普及の状況や、科学的知見の充実などをふまえ、年度ごとに見直されています。
グリーン購入は、国や公的機関は義務、地方公共団体は努力義務とされています。
参考:環境省『グリーン購入法について(グリーン購入法.net)』
CSR調達
CSR調達とは、「企業の社会的責任」を意味するCSR(Corporate Social Responsibility)を、調達に応用したものです。CSRとは、自然環境だけでなく、顧客・投資家・従業員などのステークホルダーや、法令順守、人権問題など、さまざまな方面への企業責任を指します。
より幅広い社会的責任を含むCSR調達に対し、グリーン調達は自然環境にフォーカスした調達を意味します。
「グリーン調達」を「CSR調達」の一部として捉え、活動を行う企業もあります。
製造業でグリーン調達が必要となる理由
製造業でグリーン調達の推進が強く求められる背景には、主に2つの要因があります。
1つは「法規制に抵触するリスクの回避につながる」という、原材料を調達する企業視点による理由です。もう1つは、「顧客の要望を満たした供給を行うことがビジネスの拡大につながる」というサプライヤー視点の理由です。
1.法規制に抵触するリスクを回避
原材料を調達する企業がグリーン調達を必要とする理由として、法規制に抵触するリスクの回避につながることが挙げられます。
原材料を調達する側の企業は、調達する原料などによって法律の規制を受けることがあります。製品の部品や原材料が多く、法改正への対応も必要となる製造業は、原材料や部品の管理が複雑化になりがちです。
自社で原材料そのものを管理することは難しいため、グリーン調達を導入し、サプライチェーンを通して法令や業界基準の順守を証明することは、結果として法規制やルールへの確実な対応につながります。
例えば、原材料に化学薬品や金属など有害物質を使用する場合に、法律によって基準が定められているケースを見てみましょう。
万が一、部品の段階で有害物質が基準量を超えていると、組み立てた完成品も基準値を超えた違反品となり、商品の販売停止や部品交換などが必要になる恐れがあります。
グリーン調達に関わる規制やルール例
原材料の規制に関わる規制の一例として、環境負荷となる化学物質を規制する「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(通称:化審法)」があります。
化審法は、人の健康や動植物の生息・生育に支障を及ぼすリスクがある“化学物質”による、環境汚染の防止を目的とした法律です。
自動車業界のように、独自のガイドラインを定めている分野もあります。
事業内容によっては、海外の法規制も考慮する必要があります。
参考:経済産業省『化学物質管理』
参考:経済産業省『製品含有化学物質管理ガイド 企業担当者向け』
2.顧客企業の要望に対応してビジネスを拡大
サプライヤー視点によるグリーン調達を推進すべき理由として、「顧客の要望を満たした供給を行うことがビジネスの拡大につながる」という点が挙げられます。
例えば「グリーン調達基準」を制定して環境負荷低減に取り組んでいる企業のみと取引している顧客や、購入先の選定に「ISO14001」「エコアクション21」の認証を条件としている顧客と取引を行う際は、自社がその基準を満たしている必要があるためです。
グリーン調達のガイドラインを制定し、環境へ配慮した製品やサービスを提供している企業と優先的に取引している場合もあるでしょう。
このような顧客に販路を拡大するため には、グリーン調達に対応できるサプライヤーであることを示す必要があります。
現状、グリーン調達そのものが法律で規制されることはありません。しかし将来的に、グリーン調達が調達の必須要件として法律で規制される可能性はあります。
参考: 環境省『環境と経済』
グリーン調達の推進に役立つガイドライン
グリーン調達の基準となるのは、環境省が作成した「グリーン調達推進ガイドライン(暫定版)」です。
ガイドラインには、グリーン調達の動向や効果、グリーン調達基準の全体構成例などが掲載されています。自社が独自のガイドラインを作成する際の参考になるでしょう。
企業のグリーン調達への対応と環境経営を促進する目的のガイドラインであるため、法的な拘束力はありません。
出典:環境省『グリーン調達推進ガイドライン(暫定版) 』
参考:環境省『グリーン購入取り組み状況・事例データベース』
グリーン調達を進めるには?手順を紹介
グリーン調達を制定・実施する主な手順は、「基準作成」「方針の共有」「運用」の3ステップです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.グリーン調達の基準作成
最初に必要なのは、どのような基準でグリーン調達を行うのかを明確にすることです。
グリーン調達の基準は、業界や各企業の特性によってさまざまです。例えば製造業と小売業では、環境への影響や負荷となる要因が異なるでしょう。含有禁止物質の確認、化石燃料の使用、廃棄物の処理方法など、管理すべき項目が異なることが一般的です。
業界によっては、独自のフォーマットで共通化していることもあります。
自社の事業内容に即したグリーン調達の基準を採用しましょう。
基準とあわせて、「環境保護のためにどのような調達方針を定めるのか」「適用範囲はどこまでか」といった自社の枠組みを設けるとよいでしょう。
参考:経済産業省『製品含有化学物質管理ガイド 企業担当者向け』
2.グリーン調達の方針の共有
グリーン調達の基準を明確になったら、文書化して社内に展開します。
さまざまな製品を製造・販売している企業では、部門ごとに取引の内容が異なることもあるでしょう。
混乱を招かないように「グリーン調達の基本方針や環境保護への考え方のみをグリーン調達基準に記載・共有し、具体的な内容は、各部門ごとに決定・実施する」という方法もおすすめです。
3.グリーン調達基準の運用
グリーン調達基準が確定したら、サプライヤーに公開し、基準に沿った調達を実施します。
認定制度を設け、認定のある企業のみ取引可能としている企業もあります。
自社のグリーン調達基準を運用していく中で、取引において、基準を満たすサプライヤーの選定が求められる場面もあるでしょう。その際、今まで取引のあったサプライヤーが、自社が求める基準を満たしているとは限りません。
サプライヤーの環境経営について支援を行うなど、協働して取り組み、段階的に進められる体制を構築することも有用と考えられます。
取引可能となったサプライヤーであっても、経営状態は変化していきます。
また、関連法規などの改正があった場合、変更内容を自社のグリーン調達基準に反映する必要があります。
グリーン調達を支援する生産管理システム「ProAxis」

グリーン調達基準の運用は、製造工程における化学物質の管理、関連法規や海外の業界ルール順守、企業間の連携などが求められ、管理が複雑です。そこでおすすめなのが、グリーン調達を支援する「生産管理システム」の活用です。
化学物質の調査報告業務を支援
ProAxisは、製造業の受注管理や生産計画、購買管理や在庫管理など、生産管理におけるさまざまな業務を一括して管理するシステムです。
例えば、グリーン調達で欠かせない化学物質の調査報告業務を支援する「含有化学物質集計サポート」機能などを搭載しています。
カーボンニュートラルへの取り組みもサポート
ProAxisは、カーボンニュートラルへの取り組みもサポートします。
温室効果ガスの総排出量について、排出量から吸収量と除去量を差し引き、温室効果ガスの排出量を“実質ゼロ”にすることです。
カーボンニュートラルに向けてサプライチェーン排出量の計算が必要な場合、ProAxisで温室効果ガスの排出量を登録・集計を効率化できます。
専用の保守窓口があるので安心
ProAxisの本稼働開始後は、お客様専用の保守問合せ窓口「i-Support」を設置するため、初めてシステムを導入する企業様でも安心してご利用いただけます。
ProAxisは“安心の One Stop Service”を掲げており、課題の掘り起こしから分析、提案まで、お客様に寄り添って課題を解決するソリューションをご提供いたします。
またキッセイコムテックは、グリーン購入ネットワーク会員、環境マネジメント(ISO14001)認証を取得しております。
\ 生産管理システム「ProAxis」に関するご相談・ご質問はこちら /
グリーン調達を導入して、環境を守りながら自社の価値を高めよう
製造業におけるグリーン調達は、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、企業価値や競争力を高める重要な取り組みです。
原材料や部品を多く扱う製造業では、化学物質管理や法規制への対応が複雑化しやすく、サプライチェーン全体での管理体制構築が欠かせません。
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