多品種少量生産とは。取り組みが進む分野や例、メリットと課題解決方法を解説

多品種少量生産とは、同じ工場・設備を使いながら、仕様の異なる製品を小ロットで効率的に作り分ける生産方式です。
近年の製造業では、顧客ニーズの多様化や競争力強化の必要性などから、多品種少量生産が求められることが増えています。
一方で、段取り替えの頻発による生産性の低下、品種ごとの原価把握の難しさ、作業計画や在庫の複雑化など、管理者にとっては避けて通れない課題も多くあります。
適切な生産管理をしなければ、現場の負荷が上がり、採算悪化を招くリスクもあります。
この記事では、多品種少量生産が進む業界の例をもとに直面しやすい課題、そして管理レベルを高めるための実践的な解決策をわかりやすく解説します。
多品種化への対応を検討している製造管理者・生産管理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること(3行サマリー)
- 多品種少量生産とは、多様な製品を小ロットで柔軟に作り分ける生産方式で、変化する顧客ニーズに柔軟に対応するため近年増えつつある
- 在庫リスク低減や競争力強化につながる一方、コスト増や管理の複雑化が課題となる
- AI・IoTの活用や生産管理システムの導入により、効率的な多品種少量生産を実現できる

第2営業部
中尾
業種や規模の異なる多様な製造現場で、課題のヒアリングから導入後のサポートまで一貫して携わり、多くのお客様から信頼をいただいてまいりました。
具体的な事例や成功体験について、ぜひお話しできればと思います。
お客様のビジネスをさらに成長させるお手伝いができるよう、全力で取り組みますので、ぜひお気軽にご相談ください。
多品種少量生産とは、少量ずつさまざまな種類の製品を製造する生産方法
「多品種少量生産」とは、同一工場やライン内で、仕様の異なる多くの製品を少量ずつ製造する生産方法を指します。単一の製品を数多く生産する「大量生産」とは逆の生産方法で、製品ごとの生産量は少ないものの、多様な種類の製品を生産できることが特徴です。
「多品種少量生産で利益を得られる循環を構築する」という考え方は、販売数が少ない商品を多く揃えて対象顧客を広げ、売上総額を増やす「ロングテール理論」を実現する方法でもあります。
多品種少量生産が注目される背景
製造業で多品種少量生産が注目されている主な背景として、「顧客ニーズへの対応」と 「現場作業の自動化」 という2つの側面が挙げられます。
多様化・流動化する顧客ニーズへの対応
多品種少量生産が注目される背景の1つが、多様化・流動化する顧客ニーズです。
顧客(消費者)のニーズは多様化し、流行が移り変わるスピードも早まっています。その一因として、現代ではSNSの利用が一般化し、個々の発信から多様なニーズが顕在化しやすくなったことが挙げられます。
次々と流行が生まれ、そして廃れていくという循環ができています。
このような状況では、大量生産という従来の製造スタイルで多くの顧客ニーズを満たすことは困難といえるでしょう。先の需要が読みづらいため、多くの在庫を抱えておくことが企業にとってリスクが高い状況であることも、多品種少量生産が必要とされる理由です。
現場作業のデジタル化による「マス・カスタマイゼーション」
多様化するニーズへの対応が必要に迫られて行う変革である一方、製造現場のデジタル化が進んでいることは、多品種少量生産を後押しする一つの要因となっています。
2011年にドイツで提唱された政策「インダストリー4.0(第4次産業革命)」が製造業のデジタル化を推進したことと、企業のDX化は製造業も例外ではありません。
総務省はインダストリー4.0について、平成30年版の情報通信白書で次のように述べています。
インダストリー4.0の主眼は、スマート工場を中心としたエコシステムの構築である。人間、機械、その他の企業資源が互いに通信することで、各製品がいつ製造されたか、そしてどこに納品されるべきかといった情報を共有し、製造プロセスをより円滑なものにすること、さらに既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築をもたらすことを目的としている。これらの仕組みの整備が進めば、例えば大量生産の仕組みを活用しながらオーダーメードの製品作りを行う「マス・カスタマイゼーション」が実現する。
(出典:総務省「平成30年版 情報通信白書」)
IT技術の活用により、収集したデータをAIが分析して指示を出す、在庫管理を自動化するなど、現場作業の効率化・省人化が進みました。
その結果、生産コストが低減し、個々のニーズに対応する受注生産(カスタマイゼーション)をしながら大量生産(マスプロダクション)を継続できる、「マス・カスタマイゼーション」の実現が可能となりました。
このマス・カスタマイゼーションへの取り組みが、戦略的な多品種少量生産につながったと考えられます。
多品種少量生産の製品例。どのような製品に取り入れられている?
多品種少量生産は、自転車・アパレル・食品・化粧品など、さまざまな業界や製品に取り入れられています。ここでは、多品種少量生産の具体例を紹介します。
例1:自動車
自動車業界では、多品種少量生産が一般的です。
形・性能・デザイン・色・価格帯など顧客が車に求める多種多様なニーズに応えるには、必要に応じて必要な分だけ生産する形態が適しているためです。色や内装、オプションなどを顧客が選べるようにすることで、単なる移動手段ではなく「自分の車」というプレミアムな価値を顧客に提供できます。
例2:アパレル
アパレル業界も、多品種少量生産を取り入れている業界の1つです。
顧客のライフスタイルや好みのファッションが千差万別で、流行の移り変わりも激しいアパレル業界では、多様なニーズに素早く対応することが求められます。また、同じデザインでも、色違いやサイズ違いの多様な製品を用意する必要があるため、多品種少量生産が適しています。
例3:食品
食品業界でも、多品種少量生産が取り入れられています。見た目や味、アレルギー対応・機能性など「消費者の多様なニーズにどれほど応えられるか」が、製品の売れ行きを左右する要因の1つとなるためです。
例えばチョコレートを使った製品の場合、定番のチョコレートだけでなく、クッキーや焼き菓子、飲料などのさまざまな製品が市場にあふれています。そのなかで消費者の興味を引くには、フレーバーのバリエーションやパッケージデザインなども重要です。
例4:化粧品
化粧品も、顧客の肌質や年齢などによって異なるニーズに幅広く対応できる多品種少量生産が適しています。シーズンごとに新しい製品が販売されるライフサイクルの短さも、多品種少量生産が多くなる理由です。
多品種少量生産のメリット
多品種少量生産には、「顧客満足度を向上させられる」「市場の移り変わりに対応し、過剰在庫のリスクを軽減できる」「企業の競争力を強化できる」といったメリットがあります。
顧客満足度を向上させられる
顧客満足度の向上につながることは、多品種少量生産のメリットです。
多品種少量生産は、製品のデザインや機能など、多様な顧客ニーズに対応可能です。
また、多品種少量生産を行うことで、顧客が多くの製品から自分のニーズを満たす製品を主体的に選択可能になります。
市場の移り変わりに対応し、過剰在庫のリスクを軽減できる
市場の移り変わりに対応し、過剰在庫のリスクを軽減できることも、多品種少量生産のメリットに挙げられます。
従来の大量生産では、需要予測に基づいて多量の製品を製造していました。しかし、需要が予測を下回ると在庫過多となり、廃棄や処分などのコストが発生します。
企業の競争力を強化できる
企業の競争力を強化できることも、多品種少量生産のメリットです。
多品種少量生産における3つの課題
多品種少量生産を推進するには、課題をふまえ対策を講じることも不可欠です。ここでは、多品種少量生産の主な課題を紹介します。
生産コストが増加しやすい
多品種少量生産における1つめの課題は、生産コストが増加しやすいことです。
さまざまな種類の製品を少量ずつ生産するには、各ニーズに合わせて原材料や工程、ときには生産設備も変える必要があります。
リードタイムが長く生産効率が下がる
多品種少量生産における2つめの課題は、リードタイムが長く生産効率が下がりやすいことです。
生産計画の調整が難しい
多品種少量生産における3つめの課題は、生産計画の調整が難しいことです。
生産現場では、それぞれの製造方法や必要なプロセス、納期に合わせて生産計画を立てます。
課題を解決するには?多品種少量生産を成功に導く方法
多品種少量生産を成功に導くためには「受注を分析して生産計画を立てる」「段取り替えを見直す」「AIやIoTによるデータ活用を進める」「生産管理システムを導入する」といった方法が有効です。
多品種少量生産を推進するには、各課題に対して適切な対策を講じる必要があります。
受注を分析して生産計画の精度を立上げる
多品種少量生産で増えがちな生産コストを抑えるためには、これまでの受注を分析して、精度の高い生産計画を立てることが大切です。
「汎用性が高い原材料は在庫を多めに確保しておく」「受注頻度と数量が多い製品は専用ラインを設ける」など、データに基づき精度の高い生産計画が行えれば、生産ラインの効率的な稼働や、過剰在庫のリスク軽減などにもつながります。
「段取り替え」を見直してリードタイムを短縮する
「段取り替え」を見直す方法も有効です。
生産ラインに流す製品に合わせて、加工機や冶具・装置の設定を変更する作業のこと
多品種少量生産では、製品ごとに生産工程が異なるため、段取り替えの回数が多くなりがちです。
段取り替えの間は製品を生産できませんが、段取り替えを効率化すれば、リードタイムの短縮効果が見込めます。
具体的には、次のような工夫を行ってみましょう。
- 設備レイアウトや業務フローを改善して、段取り替えの回数を減らす
- 同じ工程の製品を、ある程度まとめて生産する
- マニュアルを整備して、段取り替えを誰でもできるように標準化する
- 段取り替えを、機械やツールで自動化する
AIやIoTによるデータ活用を進める
AIやIoTを活用したデータ分析によって業務効率化を目指す方法も、積極的に取り入れたい方法です。増加するコストや複雑化する生産計画などに対応するには、管理生産工程の最適化や作業方法の改善が必要になるためです。
AI・IoTを取り入れる例として、検査工程にAIを組み込み、これまで人が行ってきた不良品検知を自動化する取り組みがあります。
AIにおける画像認識技術を活用することで、このような自動不良品検知が可能となります。
生産管理システムを導入する
多品種少量生産では、受注変動や品目ごとの条件違いにより、生産計画が複雑になりやすくなります。
その解決策として、生産管理システムを導入し、生産スケジュール・在庫・進捗・負荷状況などを一元管理することが効果的です。
部門間で情報が共有されることで、担当者の勘や経験に頼った属人化を抑え、誰が見ても判断できる生産管理体制を構築できます。
さらに、「どの製造指示を優先すべきか」「納期に間に合わせるにはどの工程を調整すべきか」など、顧客対応のスピードと精度向上にもつながります。
多品種化による管理負荷を減らし、生産性と顧客対応力を高めたい企業にとって、生産管理システムは非常に有効な解決策といえます。
多品種少量生産におすすめの生産管理システム「ProAxis」

生産管理システム「ProAxis」は、製造業に特化した統合型システムで、製番BOM(部品表)運用による多品種少量生産に対応しています。
ProAxisを導入するメリット
「ProAxis」は、生産の上流から下流までの各工程を一括管理するため、次のようなメリットを得られます。
- 状況をタイムリーに共有できるため、生産計画の修正・変更がスムーズ
- トラブルやボトルネックを早期に発見して、リードタイム短縮を実現
- 部門間での情報共有やコミュニケーションの円滑化
本運用後は、お客様専用の窓口「i-Support」を設置するため、システムにトラブルが発生しても迅速な対応が可能で、安心してご利用いただけます。
生産管理システムだけでなく、基幹業務プラットフォーム全体のご提案も可能です。
生産コスト削減やリードタイムの改善など、多品種少量生産の課題解決は、ぜひキッセイコムテックにご相談ください。

多品種少量生産を効率化して、生産性を上げよう
多品種少量生産は、同一工場やライン内で、仕様の異なる多くの製品を少量ずつ製造する生産方法です。顧客ニーズに合わせた生産が可能で、以下のようなメリットがあります。
- 顧客満足度を向上させられる
- 市場の移り変わりに対応し、過剰在庫のリスクを軽減できる
- 企業の競争力を強化できる
一方、多品種少量生産を成功させるためには、生産コストの増加や、工程の煩雑化などの課題に対応することが必要です。製造業において多面的な情報を一元管理できる生産管理システムは、計画の精度向上やリードタイムの把握と短縮など、課題の把握と対策の立案にも効果的です。
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